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Masdevallia leptoura

先週のラン協会月例会で、マスデバリア1株購入。Masdevallia leptoura という。エクアドルからペルー北部にかけて自生しているらしい。

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ところが、 この写真を見た人に、Masd.polysticta に似ていると言われてしまった。 Masd.pachyura に似ているという人もいる。では、一体どこが違うのだろうかと、本で調べてみた。( “Masdevallias—Gems of the orchid world” Mary E.Gerristsen & Ron Parsons共著)

この本には Masd.polysticta の写真が載っている。それを見ると、セパルの内側に毛が生えている。leptoura には生えていないので、その辺が違うのかなと思う。

Masd.pachyura については、著者は触れていなかった。

だが、別のランの名前があがっていた。 Masd.caloptera である。栽培されているMasdevallia leptoura の中に、間違ったラベルがついているものが多いそうだ。何と間違えるかと言うと、この Masd.caloptera だ。いかに間違えることが多いかについて、例として、アメリカ・ラン協会(AOC)受賞ラン (CCM/AOC)にまであると書かれていた。だが、実はこの2種の区別はそう難しくないそうだ。

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この4種のマスデバリアは、全て、アマンダ亜属(subgenus Amanda) に属していて、どれも花茎から複数の花が咲く。一応、買ったマスデとほかの3種の区別がつくかもしれないので、横顔も・・・。

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英国ラン協会(Orchid Society of Great Britain)8月例会

今日のトークは、去年キュー植物園を退職したばかりのフィリップ・クリブ博士による、学術調査旅行での体験談だった。博士は世界的なランの権威で、キュー植物園で30数年をすごし、ラン標本の責任者として、それまで放置されていたラン標本を分類整理し、名前をつけ、多くの学術調査に参加、それに基づいた多くの著作がある。

初めての学術調査は1976年。アフリカでの3ヶ月。「そこのランはもう既に調べ尽くされているから、行っても無駄だよ」と言われた、その地域に入った初日から、複数の新種のランを発見したという話から始まった。その後再びアフリカ(イエメン、エチオピア、カメルーンなど)、ニューギニア、ニューブリテン島、ソロモン諸島、ボルネオ、オーストラリア、ブータン、中国、ベトナムなどを訪れたそうだ。

わたしにとって興味深かったのは、珍しいランの写真。そしてそれらの調査旅行が危険と紙一重だったという事実。そのいくつかの例。

たとえば、初回のアフリカ(タンザニア)行では、車の外に出たとたんにライオンに出くわした話。沼地に咲くランを見に、深さ3-40センチの水の中を歩いて行ったが、そこをヘビが、広げた自分の両足の真ん中を泳いでいったという話。 ニューギニアでだったと思うが、原住民に重い槍で襲われそうになったという話。襲われていれば死ぬということだ。また木や山に登らなければならないが、それが危険と紙一重だという例として、過去にキューで博士号の勉強をしていた人が木から落ちて帰らぬ人となったという話。ボルネオでは、荷物を全部パックしてリュックに入れた同行者が、そのあと、そのリュックの一番上に10センチ以上あるサソリが入っているのに気づいた話。びしょぬれになった皮の登山靴を干して寝たら、翌朝、靴底が床に落ちている。皮の部分は地元の犬に食べられてしまったという話。オーストラリアでは干していた下着を食べられてしまったという話。ランを見に木に登ったら、運悪くハチの巣につっこみ、襲われて、ハチから逃れるために下の川に飛び込んだ人の話。この人は顔がかぼちゃみたいに膨れ上がったという。

あまりにも日常生活からかけ離れているので、それがとてもおもしろく興味深かった。

ニューギニアでだったと思うが、博士が珍しいランを見つけ歓声をあげた。”Wow!” 「わぁお!」。それから、「わぁお!わぁお!」ダンスが始まったという話。これは博士がランを見つけて歓声を上げるたびに、同行している原住民が「わぁお!」「わぁお!」と言ってひとしきり踊るのだそうだ。

そうそう、これも確かニューギニアでだったと思うのだが、ある部落では、ご先祖様をミイラにして保存、必要に応じて出してくるのだという。クリブ博士も、「わたしの曽祖父を紹介します」と、真っ黒のミイラを出してこられたことがあるそうな。その写真を見せてくれたが、これもびっくりであった。

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ほかにおもしろかったのはランの利用法。トルコでは地下塊をアイスクリームに入れると読んだことがあるが、ブータンでは、シンビジウムの花をカレーに入れるのだそうだ。苦味が出ていいらしい。タンザニアでは、Habenaria cornutaのだったかな?地下塊を食用にするのだそうだ。 また中国のグァンシ南部では、デンドロビウムを薬として利用するのだそうだ。

こういう話をとてもおもしろく聞くことができた。ただ、地理に疎いわたしとしては、中国のグァンシ南部なんて言われてもどの辺のことか全くわからない。地図で調べてみよう。

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マスデバリアを1鉢買った。

チャールズ皇太子の花譜・その3

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待ちに待ったチャールズ皇太子の私邸、ハイグローブ邸へのご招待の日は、7月20日(金曜日)だった。天気予報では豪雨。前夜大雨が降っていたが、もううちの辺りでは峠を越した、ただハイグローブ邸のある地域は今から豪雨・・・。いやだなとは思ったものの、長靴も車の中に入れ、準備完了。ハイグローブ邸へ向かった。

ところが環状高速道路(M25)に入ったとたん、尋常ではないノロノロ運転。間に合うかな?と不安は感じたものの、もちろん時間は十分にとっているしと、なんとか気を静めながら進む。ノロノロの原因は高速道路片側3,4車線あるうちの1、2車線が冠水していたため。1ヶ所そういう場所をすぎても、しばらく進むとまた同じように冠水していたりして、かなり時間を食う。

ようやく、別の高速道路(M4)に乗る。が、しかし、ノロノロ度は悪化。ほとんど進まない。しかも原因がわからない。途中、サービスステーション入り口あたりがひどく冠水していて、その中に車が一台。テールランプがついたままのが浸っている。豪雨のひどさを実感する。

あまりのノロノロぶりに、ついに賭けに出ることにする。高速道路を降りたのだ。ほんとは高速を降りると、下の道は川沿いの道。まずいかなという思いは十分にあったのだけど、少なくても自由は確保される、との思いであった。

賭けは負け。ノロノロ度は同じ。何故ノロノロだったのかが分かったときは、先に進むよりほかなく、冠水した道路を進む。(上の写真) 途中高速に戻ろうにも、インターチェンジに行くあたりも冠水しているとのことで選択できず、更に進んでから高速に戻る。

戻ってからは、それほどは混まずに進むことができたのだが、もうその時点でうちに引き返すかどうかという話が出るくらいに約束の時間からは遅れていた。それでも、せめて一目、自分の絵が見たいとの思いから、先に進む。

高速を降り、ようやくあと少しという時点で、同じくハイグローブ邸に向かっていた友人から電話が入る。

「引き返してください。ハイグローブ邸へ向かう道路は通行止めになっています。そこを強行突破してハイグローブ邸の前まで行ってみましたが、見事に冠水。しかも鉄の門扉は固く閉ざされ、中に入れてもらおうにも誰もいない。なす術ないです」とのこと。

うーん。がっかり。約束の時間は3時半。実はこの連絡を受けたのが、6時半。3時間以上の遅刻。いや、実際は多分、約束の3時半きっかりから4時くらいまでは入れたのだろうが、それ以上遅れた場合には中に入るのは無理だったのかもしれない。とにかく中の人と連絡をとりようがないのだから。

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実は今回のハイグローブ行きには、日本からも3人のアーティストの方が招かれ、いっしょに行くことになっていた。ところが、つい数日前に、その方たちは予定を変更され、電車で行くことにされた。当日の朝、自分のこともそうだが、彼女たちの電車は果たして出るのだろうか?と不安に思ったが、結果的には、とても運がいいことに 彼女たちの電車は無事に目的地に到着し、そのあとの電車は運休になったことなどつゆ知らず、優雅に昼食を楽しみ、そこからタクシーでハイグローブ邸に無事到着されたのだそうだ。

このために、日本からわざわざ来られ、そして肝心の目的を達成できなかったとなれば、がっかり度も違うだろうから、彼女たちはよかったなと思うけれども、それにしても残念なハイグローブ行きではあった。

ちょっとうれしかったこと

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ちょっと相談があって、オークリー博士を訪れた。博士はアングロア属、リカステ属、イダ属などのランを集めている。そして、アングロア属のランと、リカステ、イダ属のランの、新種を除いた、ほぼ全種を、2人のアーティストに描いてもらっている。その素晴らしい植物画のコレクションが、家の中に飾られていて、それはまるで展示会のようである。

2年前に初めて訪れたときに、その絵は見せてもらっていたのだが、今回もまた見せてもらった。とても素晴らしい。

温室ものぞいてきた。これも2年前にのぞいたときは、冬から春へと季節が移り変わる頃だったので、リカステの葉っぱはまだあまり伸びていなかったのだが、今回は夏。温室の中はリカステの大きな葉がからみあって、まるでジャングルのようだった。

ちょうどその2,3日前に写真で見たばかりのHoyaが咲いていて、感激のあまり、叫んでしまった。おかげで、1枝手折ってもらったので、今日、写真を撮ることができた。(上の写真)

帰りに、玄関先においてあったイダの話になる。そのイダは、何でも新種で、ペルーで発見したとのこと。ペルーフローラのアリアス氏の名をとって、Ida ariasiiイダ・アリアシーと名づけたそうだ。そこでわたし。

「今度は、わたしの名前をつけてください!」

「え! そういうことに興味あるの?」「原種はわからないけど、交配種だったら、すぐにでも・・・」

え! すぐにでも、わたしの名前を冠したランができる? そんなことが実現したら、これは本当にとってもうれしい。博士、どうか、忘れないでくださいね!

Encyclia sp.

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王立園芸協会(Royal Horticultural Society ・RHS)のウィズリー植物園にあったランです。札には「Encyclia sp.」とありましたが、その後、エンシクリアを集めている人に調べてもらっても、またオークリー博士に聞いても、はっきりしたことはわかりませんでした。

Anacheilium cochleatum (Encyclia cochleata) と同じ、Anacheilium 属だと思います。